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野球肘

  野球肘

(図56)野球肘

(図57)

 

 まず肘の外側と内側をわかりやすくするために、手の掌を前に向けて伸ばした状態を想像して下さい。(図57母指側が肘の外側で小指側が肘の内側です。

 

1.症状について
1)肘が伸びなくなる。
2)肘の外側を中心とした痛み。
3)肘の内側を中心とした痛み。
4)肘の後方の痛み。
5)前腕の内側から小指にかけてのしびれ。

 

2.検  査
1)エックス線検査; 
   野球肘のあらゆる情報がつまっていますので大変有用ですが、正面と側面の二方向写
   真だけでは、病変部が隠されて見えないことが多いのが野球肘の特徴です。
 
2)MRI;
   外側の骨軟骨障害の存在が明瞭にわかります。
 
3)CT; 
   遊離軟骨や骨棘の存在が明瞭にわかります.
 

 

3.治療および病気について
 野球肘には大きくわけて、肘の3箇所に問題が起こります。(図58)内側は内側側副靱帯を中心に損傷がおきますが、子供の時には骨が弱いので、靱帯の付着した骨の方が剥がれることがあります。早期に診断がつけば骨が癒合する(治ります)場合があります。痛みが治まってからフォームの改造に取り組んで下さい。フォームが完成するまでは、投球練習は再開しない方が賢明です。
 外側は骨軟骨に障害が起きます。エックス線検査やMRI検査で診断されたら、1年間は野球を止めるくらいの決意が必要です。手術が必要な場合ではいたずらに時期を延ばさない方が賢明です。
 後方の痛みは肘頭の骨が疲労骨折をおこしたり、骨の棘があたったりして、痛みがでます。疲労骨折は治りが悪く手術になる場合がありますので、『治った』と許可がでるまでは野球の安易な再開は厳禁です。
 野球肘の状態が悪いときには肘が伸びません。左右比べて投球側の肘の伸展が悪い場合には、野球を中止して専門医を受診してください。
 
 野球肘の問題を考えるとき、いつも監督や両親などの大人の理解のなさに突き当たります。病院で診察を終えて、投球禁止の説明をした直後に、『来週の試合に出したらいけないですか?』という質問を監督や両親から受けることがあります。目先の試合に追われて、有能な才能をつぶす事だけは避けて下さい。子供の骨や軟骨は柔軟です。傷つきやすい代わりに、回復力も併せ持っています。しっかりした治療をすれば、将来必ず才能は開花するはずです。
 野球肘(特に外側の骨軟骨障害)と診断されたら、思い切って1年間水泳、陸上、ラグビーなど全く違う種目をやらせては如何でしょうか。それまでチームのエースだった子供が、1年間見学に近い扱いで野球チームに所属させることの残酷さを大人は理解すべきです。それよりももっと違うスポーツに参加させて、身体能力を向上させた後に野球に復帰させれば、一味も二味も違った才能の輝きが見えてくるはずです。
 
(図58)