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変形性股関節症

  変形性股関節症

1.症  状
 
1)股関節の疼痛。
2)歩行時や歩行後の痛み。
3)階段昇降時の痛み。
4)跛行などの歩様異常。
 (いわゆるびっこをひくこと)
5)脚長差(足の長さの左右差)。
6)可動域制限(靴下がはきにくい)
 
最終的には股関節の曲げ伸ばしが困難になったり、歩行ができなくなる重症タイプもあります。(図28)

(図28)靴下をはくのが困難

    

 

2.検  査
1)エックス線検査;
   関節列隙の狭小化(関節の隙間が狭くなる程度=軟骨の摩耗)、骨棘形成の程度(変形
   の程度)、骨硬化や嚢腫形成の程度
 
2)MRI;
   X線写真だけではわからない、関節唇の変性や断裂、骨嚢腫形成や欠損状況など骨関節
   軟骨の病態のより詳細な把握に有用です。
 
3)C  T;
   骨の三次元の構造などより立体的な臼蓋と骨頭の関係が把握できる。
 
(図29)
 

 

3.治療について  
 変形性股関節症は急激に歩行ができなくなる疾患ではなく、長い年月を経て悪化する変性疾患の一つなので、日常生活の指導から治療が始まります。初期の場合には股関節に負担をかけないために体重のコントロールをしたり、階段昇降など無理な動作を禁ずるなど食事指導や生活指導を行います。股関節の負荷軽減の目的で股関節周囲の筋力訓練(図30)をしっかりします。湿布や外用剤が有効な場合もあります。さらに炎症が強い場合には一時的に消炎鎮痛剤(痛み止め)の薬がでます。
 

(図30)ゴムチューブを使った股関節

    外転筋力トレーニング

  

経過によっては手術になる場合があります。
1)骨切り術;
   臼蓋と骨頭との適合性が悪い場合に骨切りをして関節面の不適合や臼蓋形成不全を矯
   正します。この手術のメリットは股関節症が重症化していない比較的早期の段階で行
   えば、長期成績も比較的安定して自分の関節を温存できるという点にあります。
 
2)人工股関節置換術(図31)
   股関節の関節表面を人工の関節に置き換える手術です。社会復帰が早く、その除痛効
   果も著明です。近年特に進歩して、その長期成績も良好です。

(図31)人工股関節置換術術後

 

4.薬剤について
 痛みの程度によって消炎鎮痛剤(痛み止め)を処方します。早期の痛みを取るきっかけとして1〜2週間飲んでもらう場合が多いですが、長期間漫然と薬を飲み続けるのは無意味なばかりか副作用発現の可能性が高くなります。QOL向上目的にしっかりした保存療法を背景として消炎鎮痛剤を適切に利用しましよう。

 

5.病気について
 先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全などに伴う二次性変形性股関節症(子供の時の股関節の状態が原因でおこる股関節症)が日本では圧倒的に多く、高齢になると重度の股関節症に至るようになります。また外傷後やペルテス病、大腿骨頭壊死症、化膿性股関節炎などの病気の後に変形性股関節症に至るケースも多く見られます。いずれにしても臼蓋形成不全や臼蓋と骨頭の関節の不具合がはっきりしている場合には、比較的早期に臼蓋や大腿骨の骨切り術で治療することになります。むしろ股関節症が余り進行していない早期に手術をする方が長期成績が良いようです。手術が上手くいくと長期的に関節の軟骨は温存され、良好な関節面が形成維持されるからです。
 上記の病気に引き続いて発症する二次性変形性股関節症とは別に特に原因なく加齢に伴って発症する一次性変形性股関節症があります。一次性股関節症は欧米で多く見られます。日本でも最近徐々に増加している印象があります。
 いずれにせよ急激に進行する疾患ではないので、ゆっくり病気と付き合いながら体重のコントロールや筋力訓練など自分でできることはしっかりやるのが良いと思います。歩くことで疼痛が増悪するようなら、プールなどで歩行訓練をするのも股関節に負担をかけることなく運動不足の解消や筋力訓練にもつながると思います。
 手術を受ける際には股関節症の程度によっては早期の骨切り術が有効な場合が多く、若いときに股関節に病気を持っていた人は症状が重症化する前に専門医に相談した方が良いと思います。
 最近では人工股関節置換術の成績が良好で比較的早期に除痛と社会復帰が見込まれるため、50歳以上の重症型であれば、手術を受けて疼痛を除いた後に、リハビリをしっかりして、前向きな向上心を持って、体重のコントロールなどに取り組んだ方が得策かもしれません。
 進行性の病気では無いことを念頭において、体重コントロールや筋力訓練をじっくり行って下さい。