特発性大腿骨頭壊死症
1.症 状
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足の付け根が痛くなる病気です。大腿前面(ふともも)から膝にかけての痛みとして発症する場合もあります。また腰臀部の痛みとして訴えることもあります。最初は痛みが消える場合もあり、痛みを我慢して放置していると病気が進行して、歩行困難になります。
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2.検 査 |
1)エックス線検査;
初期ではほとんどわかりません。病気が進行すると骨頭の変形として、X線所見を認め
ます。骨頭圧潰、帯状硬化等の所見があります。病気が進行した場合、最終的には変
形性股関節症の末期像になります。
(図37)大腿骨頭壊死症
2)MRI; 初期から骨頭内に帯状の骨変化を認めます。早期発見には大変有用です。病期の把握 や治療経過を観察するのにも大変有用です。 |
3.治療について | |
本症では手術的治療が中心となります。手術以外で普段心がけることは体重を減量し、できるだけ杖や松葉杖歩行をして、股関節に対する負担を軽減することです。
手術は自分の骨を残して治す骨切り術と人工関節に置き換える人工股関節置換術があります。
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1)骨切り術(図38);
骨頭の壊死範囲が限定されている時期に大腿骨
頭回転骨切り術などが行われます。成功すれば
自分の関節が残りますので、一生安心できる手
術ですが、技術的にやや難度が高いのが難点で
す。また壊死範囲が拡大していたり、すでに変
形性股関節症に移行していたら、適応外になり
ます。
2)人工股関節置換術;
患者が高齢者であったり、骨頭の壊死が広範囲
に拡大している場合あるいは既に変形性股関節
症に移行している場合には、1)の骨切り術で
は限界があります。そこで治療は股関節を人工
関節に置き換える手術となります。社会復帰が
早く、その除痛効果も著明です。しかし自分の
関節ではありませんので、その長期成績にも限
界があるのが難点です。
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(図38)骨切り術
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4.薬剤について |
痛みの程度によって消炎鎮痛剤を処方します。長期間漫然と薬を飲み続けるのは無意味なばかりか副作用発現の可能性が高くなります。QOL向上目的にしっかりした保存療法を背景として消炎鎮痛剤を適切に利用しましよう。
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5.病気について |
青壮年期に発症することが多く、原因不明の大腿骨頭の阻血による壊死をきっかけに発症するといわれています。アルコール多飲やステロイド多量投与と関連して発症することが多く、これらは明らかに発症の誘因となっています。したがってステロイドを多量に投与する必要のある病気に罹患した場合には、整形外科に早めにコンサルトして、必要ならMRI検査を受けたほうがよいでしょう。
治療は手術的な治療が中心となります。好発年齢が青年期・壮年期ですので、長い人生を考えればできるだけ自分の関節で生活したいものです。そこで本疾患の場合関節温存手術(大腿骨頭回転骨切り術)は大変に有用な治療手段となります。しかしすでに変形が進行して関節温存できない場合には人工股関節置換術になります。
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